肛門専門科_京都市

パオスクレ―による痔核硬化療法

渡邉医院(京都)では、内痔核(痔)に対してパオスクレ―という痔核硬化剤を使っての痔核硬化療法を行っています。
パオスクレ―はアーモンドオイルの中に5%の割合でフェノールが含まれている油性の痔核硬化剤です。
作用としては、アーモンドオイルが内痔核を作っている血管を直接圧迫し、フェノールが無菌性の炎症を起こさせて硬化させ内痔核を治していく方法です。「硬化」と書きますが、注射した部分が硬いまま治るのではなく、一端硬くなりますが、その硬さも次第に柔らかくなって内痔核は治っていきます。
パオスクレ―による痔核硬化療法の適応は、第Ⅰ度と第Ⅱ度の内痔核です。第Ⅰ度の内痔核は、排便時に出血したり、何かはさまったような感じがする。第Ⅱ度は排便時に出血したり、排便時に内痔核が外に出てくる(脱出)が、直ぐに自然に戻る程度の内痔核です。
出血に対して特に有効です。
第Ⅲ度以上の内痔核(排便時に内痔核が脱出して指で押し込む)は痔核根治術やジオンによる痔核硬化療法が必要になります。ただ、ジオンという痔核硬化剤がないころは、パオスクレ―による痔核硬化療法も行っていました。
今回は、第Ⅲ度の内痔核に対してパオスクレ―による痔核硬化療法をおこなった患者さんについて検討し、日本大腸肛門病学会で報告した内容を紹介します。

はじめに

一般にパオスクレ―(5%フェノールアーモンドオイル、以下PAO)を使っての痔核硬化療法の適応は第Ⅰ度や第Ⅱ度の内痔核といわれています。渡邉医院では第Ⅲ度以上の内痔核に対してもPAOによる痔核硬化療法を行ってきました。最近ではジオン注(硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸液)による痔核硬化療法(ALTA療法)の出現により、第Ⅲ度以上の内痔核に対して痔核硬化療法を行う場合はALTA療法を施行するようになってきました。今回、PAOによる痔核硬化療法について検討しました。

対象(第Ⅲ度以上の内痔核278例)と検討項目

第Ⅲ度以上の内痔核に対してパオスクレ―(PAO)を使って痔核硬化療法を行った患者さん278名(男性162名、女性116名、平均年令60.8才)を対象として検討しました。方法は、PAOによる痔核硬化療法は麻酔をする必要はなく、左を下にして横になる左側臥位で行います。H19年4月12日現在での非再発率をKaplan-Meier法で計算し、パオスクレ―による痔核硬化療法の第Ⅲ度以上の内痔核に対する効果を再発面から比較検討しました(ログランク検定)。

結果

パオスクレ―(PAO)による痔核硬化療法を行った患者さんの経過観察して平均期間は1248.0±981.3日でした。PAOによる痔核硬化療法の非再発率(再発しなかった患者さんの率)は43.5%でした。PAOを使っての痔核硬化療法において286日と364日に注目してみると、286日では再発症例は48例(17.3%)であり、非再発率は280日で83.0%、364日で77.3%でした。
この結果は、第Ⅲ度の内痔核に対してパオスクレ―による痔核硬化療法を施行しても、約8割の患者さんは1年間再発なく経過したということです。

考察

第Ⅲ度の内痔核の患者さんにパオスクレ―による痔核硬化療法を行った場合、根本的に治るということに関しては不十分な結果だと思います。ただ、約1年たって再発しない患者さんが約8割程度いらっしゃるという点は大きいのではないかと思います。
パオスクレ―による痔核硬化療法は、麻酔する必要がなく、しかも入院も必要ありません。
渡邉医院では、痔核根治術の場合は、1泊2日~3泊4日の入院。ジオン注による痔核硬化療法では1泊2日の入院をしていただいています。またいずれも局所麻酔をしてから行っています。
こういうことを考えると、根治的な治療はしたいが、今は痔核根治術やジオン注による痔核硬化療法はできない。でも排便時の出血や内痔核の脱出という嫌な症状を軽減したい。そういった場合に、全ての第Ⅲ度以上の内痔核に行えるわけではありませんが、内痔核の大きさや性状にもよりますが、パオスクレ―による痔核硬化療法も治療方法の一つとなることができると考えます。

自分にあった治療法を一緒に考えましょう

今回も日本大腸肛門病学会で報告した内容を少し修正して、第Ⅲ度の内痔核に対してパオスクレ―という痔核硬化剤を使った痔核硬化療法をおこなった患者さんについて検討した内容について紹介しました。
パオスクレ―を使った痔核硬化療法は第Ⅰ度、第Ⅱ度の内痔核、特に出血という症状に対して有効です。でも第Ⅲ度の内痔核全てに行えるわけではありませんが、内痔核の大きさや性状によって、パオスクレ―を使った痔核硬化療法が有効な場合もあります。今回の検討では約1年間は8割程度の患者さんが再発なく過ごされておるという結果でした。手術やジオン注による痔核硬化療法をしてスッキリ治したい。でも今はどうしても時間を作ることができない。でも今ある出血や内痔核の脱出という症状を少しでも軽減したい。と言った場合に、このパオスクレ―を使った痔核硬化療法をするという選択肢もあると思います。
患者さんの状況に合わせて治療方法を一緒に考えていきたいと思います。
痔でお悩みのかたは、肛門科専門の京都の渡邉医院でご相談ください。自分にあった治療法を見つけ、治療していきましょう。
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医院情報

店舗名渡邉医院
住所 京都府京都市上京区浄福寺通今出川下ル竪亀屋町255
TEL075-441-4303
URLhttp://www.watanabe-arc.jp
営業時間【月~土 午前】9:00~12:00 【月・金 午後】17:00~18:00
営業日休診日 : 日曜日・祝祭日
紹介文肛門疾患に特化した、肛門科専門の19床の入院設備のある有床診療所です。外来の診察だけでなく、入院での手術・治療が可能です。年間約3,000人の新患の患者さんが受診されています。排便時の出血、痔核の脱出、痛み、かゆみなど肛門に係る不快な症状でお悩みのかたの治療を行っています。また、肛門疾患の原因でもある便秘の相談、治療も行っています。手術の件数は、月平均約50件、年間約600例です。肛門の三大疾患といわれている内痔核が50%、痔瘻が15%、裂肛が13%で、その他に外痔核が13%、その他9%の割合になっています。 お尻のことで悩み事があれば、ご相談ください。