肛門専門科_京都市

痔の治療に痔核硬化療法があります。

渡邉医院(京都)では、内痔核(痔)の治療で痔核硬化療法といって内痔核に硬化剤を注射する方法で治療をしています。
痔核硬化療法には、従来からある、パオスクレ―といって5%フェノール・アーモンドオイルを使っての痔核硬化療法と、もう12年たちましたが、ジオンといって硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸水溶液による痔核硬化療法があります。パオスクレ―による痔核硬化療法は主に出血に対して有効です。したがって、内痔核の程度でいうと、第Ⅰ度の内痔核(排便時の出血)と第Ⅱ度の内痔核(排便時の出血。排便時に内痔核が脱出するが直ぐにもどる)に対しておこなっています。またジオンによる痔核硬化療法は第Ⅲ度以上の内痔核(排便時に内痔核が脱出して、押し込む)に対して行います。ただ、ジオンという痔核硬化剤がなかったころは、第Ⅲ度の内痔核に対してもパオスクレ―による痔核硬化療法をおこなってきました。パオスクレ―による痔核硬化療法は麻酔をすることもなく行うことができ、入院の必要もありません。
ただ、第Ⅲ度以上の内痔核に対して根本的になおすのには、痔核根治術を行って手術で治すか、ジオンによる痔核硬化療法で治すことが必要です。
今回は、第Ⅲ度以上の内痔核に対してパオスクレ―による痔核硬化療法を行った患者さんについて大腸肛門病学会で発表した内容を紹介します。
今回は少し論文形式になってしまいますが、分かりやすく紹介したいと思います。

はじめに

第Ⅲ度以上の内痔核に対しての治療は、根本的に治すには、結紮切除術や最近ではジオン注などが行われています。今回渡邉医院で、第Ⅲ度以上の内痔核に対して5%フェノールアーモンドオイル(以下PAOとする)による痔核硬化療法を施行した患者さんについてその効果と痔核硬化療法をおこなった後の経過に関して検討しました。

対象(第Ⅲ度以上の内痔核278例)と検討項目

検討した対象は、第Ⅲ度以上の内痔核に対してPAOによる痔核硬化療法を施行した278例(男性162例、女性116例)の患者さんとしました。方法は、痔核硬化療法を施行した278例のうち、2回以上痔核硬化療法を行った患者さん及び、痔核硬化療法を行って、その後再発した時に手術を行った患者さんは135例(48.6%)であった。この135例の患者さんについて①2回目以降の痔核硬化療法をおこなうまでの期間、②手術をおこなうまでの期間、③2回目以降の内痔核の状態の変化について検討しました。痔核硬化療法は無麻酔下に肛門鏡を用いて1箇所の内痔核に対してPAOを5ml局注しました。パオスクレ―による痔核硬化療法は入院ではなく、外来通院で行います。

結果

痔核硬化療法を行った回数は2回から最高8回で、平均3.1回でした。痔核硬化療法を行い、初回の再発時に手術を行ったのは24例でした。2回以上痔核硬化療法を行ったのは111例で、このうち2回以上行った後に手術を行ったのは16例で、手術をしなかったのは95例でした。再発時2回目以降の痔核硬化療法施行までの平均期間は、2回目598.1日、3回目511.2日。4回目551.1日、5回目417.0日、6回目281.0日、7回目536.8日、8回目384.0日で、それぞれの期間には有意差は認めませんでした。再発した時に2回目の痔核硬化療法を行った患者さんは111例(82.2%)で、このうち69例(62.2%)が第Ⅰ度、Ⅱ度に軽快していました。42例(37.8%)は第Ⅲ度、Ⅳ度でした。第Ⅲ度、Ⅳ度であった42例中24例(57.1%)がさらに3回以上痔核硬化療法を行いました。このうち11例(45.8%)が第Ⅰ度、Ⅱ度に軽快していました。

考察

第Ⅲ度以上の内痔核に対するPAOによる痔核硬化療法は、根治性に関しては満足できる結果ではありませんでした。しかし、それでも1回の施行で第Ⅰ度、Ⅱ度まで軽快する患者さんや、何回か繰り返してPAOによる痔核硬化療法を行うことで第Ⅰ度、Ⅱ度まで軽快する患者さんもいました。麻酔の必要がなく、外来で簡便に何回も施行でき、疼痛や出血等の合併症も少ないことから、第Ⅲ度以上の内痔核においてもある程度は症状を軽減させたりすることはできる治療手段と考えます。
今回は大腸肛門病学会で発表した内容を紹介しました。
パオスクレ―による痔核硬化療法は、出血という症状には本当によく効きます。パオスクレ―による痔核硬化療法をすることで、ほとんど出血は治まります。また第Ⅱ度程度の内痔核は排便しても出てこなくなります。しかし、第Ⅲ度以上の内痔核になりますと、「出てくる」という症状には効き目が弱いです。やはり第Ⅲ度以上の内痔核になりますと、痔核根治術やジオンによる痔核硬化療法がスッキリ治すのには必要になります。しかし、患者さんの状態、出てくる内痔核の大きさなど、適応をしっかりみきわめると、パオスクレ―による痔核硬化療法でも排便時の脱出するという症状を抑えることができます。その時の患者さんの状況、内痔核の状態をみながら、パオスクレ―による痔核硬化療法を行うことは、第Ⅲ度以上の内痔核の治療には有用だと思います。
痔でお悩みのかたは、肛門科専門の京都の渡邉医院でご相談ください。自分にあった治療法を見つけ、治療していきましょう。
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医院情報

店舗名渡邉医院
住所 京都府京都市上京区浄福寺通今出川下ル竪亀屋町255
TEL075-441-4303
URLhttp://www.watanabe-arc.jp
営業時間【月~土 午前】9:00~12:00 【月・金 午後】17:00~18:00
営業日休診日 : 日曜日・祝祭日
紹介文肛門疾患に特化した、肛門科専門の19床の入院設備のある有床診療所です。外来の診察だけでなく、入院での手術・治療が可能です。年間約3,000人の新患の患者さんが受診されています。排便時の出血、痔核の脱出、痛み、かゆみなど肛門に係る不快な症状でお悩みのかたの治療を行っています。また、肛門疾患の原因でもある便秘の相談、治療も行っています。手術の件数は、月平均約50件、年間約600例です。肛門の三大疾患といわれている内痔核が50%、痔瘻が15%、裂肛が13%で、その他に外痔核が13%、その他9%の割合になっています。 お尻のことで悩み事があれば、ご相談ください。