肛門専門科_京都市

裂肛の原因は便秘などの排便障害が多いです

肛門の外側から中にに約2~3㎝皮膚があり、肛門上皮といいます。裂肛はこの肛門上皮に傷がつく病気のことをいいます。世間一般には切れ痔と言われています。肛門は便が通るところなので、便の具合で肛門が傷つきます。多いのが便秘です。硬い便を頑張って出すことで肛門が切れることが多いです。でも下痢や柔らかくても頑張って便を出した時にも傷がつくことがあります。裂肛の治療の基本は排便の状態を良くすることで、便秘であれば便秘を治す。下痢であれば下痢を治すことが一番大切です。便の状態を良くすることで、大抵の裂肛は治っていきます。でも、切れたり治ったりを繰り返すことで、慢性の裂肛になって手術が必要になることもあります。
今回は、渡邉医院で経験した裂肛と便秘について検討した内容を紹介します。今回の内容は、第67回日本大腸肛門病学会で発表した内容をわかりやすく紹介したいと思います。

はじめに

渡邉医院で経験した裂肛の患者さんについて、便秘と裂肛の関係について男性と女性とで比較して検討してみました。

対象(便秘3196例、裂肛4823例)と検討項目

平成7年12月から平成24年4月までに渡邉医院を受診された患者さんの数は25928人(男性13163人、女性12765人、平均年齢51.9歳)でした。この患者さんのなかで、カルテに便秘症という診断名が付いた患者さんnは3196人(男性1093人、女性2103人、平均年齢56.9歳)、裂肛は4823人(男性1919人、女性2904人、平均年齢43.1歳)でした。また、裂肛に対して手術を行った患者さんは1480人(男性549人、女性1480人、平均年齢42.1歳)でした。これらの患者さんを対象としました。検討の方法と検討項目ですが、対象となった患者さんを、10歳以下(A群)、11~20歳以下(B群)、21~30歳以下(C群)、31~40歳以下(D群)、41~50歳以下(E群)、51~60歳以下(F群)、61~70歳以下(G群)、71~80歳以下(H群)、81歳以上(I群)の9群に分けて検討してみました。
これら9群に患者さんを分けて、男性と女性の差を便秘、裂肛、裂肛手術に関して比較検討しました。

検討の結果

検討した患者酸の総数には男女差は認めませんでした。
便秘については、男性では年齢と共に便秘の患者さんの人数は増加し、H群(71~80歳以下)でピークになりました。女性では便秘の患者数は二峰性になり、C群(21~30歳以下)、D群(31~40歳以下)で一端ピークを認めました。さらにもう一か所、E群(41~50歳以下)以降は、男性と同様に年齢と共に増加し、H群(71~80歳以下)でピークとなりました。裂肛では男女ともほぼ同じ傾向を認め、男性ではD群(31~40歳以下)に、女性ではC群(21~30歳以下)にピークを認めました。裂肛に対して手術をした患者さんでは、女性では裂肛と同様にC群(21~30歳以下)でピークを認め、年齢と共に減少しました。男性では裂肛のピークとはややずれて、E群(41~50歳以下)にピークを認め、年齢と共に減少していきました。だた、減少の程度は、男性で緩徐でした。

考察

便秘に関しては、女性のC群(21~30歳以下)、D群(31~40歳以下)を除くと、男性も女性も年齢と共に増加しました。このことは、加齢とともに腸管の善導運動の低下や、食事の摂取量、運動量の減少など男性も女性も同じ共通した原因があると思われます。また女性のC群(21~30歳以下)、D群(31~40歳以下)の便秘については、女性に特有で、やはり黄体ホルモンによる腸管運動の抑制などが関与しているのではないかと考えられます。
便秘と裂肛の関係をみてみると、年齢と共に便秘は増加する傾向にありますが、これに一致して裂肛は増えていきません。このことは、年齢とともに便秘が増えるのに反して、内肛門括約筋の緊張が低下していくことにもあると思われます。内肛門括約筋は肛門の締まり具合に関係します。ただ誤解しないでいただきたいのが、内肛門括約筋は便が出ないように締まってくれる筋肉ではなく、通常締まっていて、便が直腸に来た時に便が出やすいように緩んでくれる筋肉です。しかし、裂肛などで排便時の痛みがあると、内肛門括約筋の緊張、締まりが強くなって、裂肛の状態が悪くなっていきます。こういったことを考えると、やはり、裂肛の原因を考える際に便秘だけでなく、内肛門括約筋の緊張の強さなど様々な要因を合わせて考え検討する必要があると思います。。
今回は大腸肛門病学会で発表した内容を紹介しました。
やはり裂肛の原因の多くは便秘が原因で、裂肛にならないようにするには、便秘の治療も大切になります。
例えば、「転んで怪我をする。」に良く似ています。魔法の薬があって怪我を一瞬で治しても、また転んでしまったら怪我をする。これと同じで、魔法のお薬で裂肛を治しても、次の便が硬かったり下痢だったりすると、また切れて裂肛になってしまいます。やはり、裂肛を治しながら、同時に便の調子を良くしていくことが大切です。
切れ痔でお悩みの方は、肛門科を専門に診療している京都の渡邉医院をぜひ受診して相談していただければと思います。
また便秘の改善などで食事の指導などを管理栄養士さんがしています。
排便の状態を良くして、裂肛にならないように、便秘などでお悩みのかたも、食事の内容など管理栄養士さんと相談していただければと思います。
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医院情報

店舗名渡邉医院
住所 京都府京都市上京区浄福寺通今出川下ル竪亀屋町255
TEL075-441-4303
URLhttp://www.watanabe-arc.jp
営業時間【月~土 午前】9:00~12:00 【月・金 午後】17:00~18:00
営業日休診日 : 日曜日・祝祭日
紹介文肛門疾患に特化した、肛門科専門の19床の入院設備のある有床診療所です。外来の診察だけでなく、入院での手術・治療が可能です。年間約3,000人の新患の患者さんが受診されています。排便時の出血、痔核の脱出、痛み、かゆみなど肛門に係る不快な症状でお悩みのかたの治療を行っています。また、肛門疾患の原因でもある便秘の相談、治療も行っています。手術の件数は、月平均約50件、年間約600例です。肛門の三大疾患といわれている内痔核が50%、痔瘻が15%、裂肛が13%で、その他に外痔核が13%、その他9%の割合になっています。 お尻のことで悩み事があれば、ご相談ください。