中小企業のブランディングがわかりづらい理由

私は、商標をはじめとして、企業の「ブランド保護」や「ブランディング」というものに深く関わるお仕事をしています。
最近気がつくのは、中小企業の経営者の方が、「中小企業にとってもブランディングが大事」という意識を持ち出したことです。

しかし、その一方で、そもそも「ブランディングとは何か?」というものがよくわかっている方は、極めて少ないな、ということも実感しています。

中小企業にとって「ブランディング」というものがわかりづらいのも、そのはずだと思います。
なぜならば、そもそも「ブランディング」という概念自体、かなり新しい時代のものだからです。意外に思われるかもしれませんが、ブランディングというものが世の中で重要視されてきたのは、割と最近のことで、せいぜい、1970年代くらいからではないかと思われます。

さらに、中小企業において「ブランディング」というものを意識しだしたのは、日本においては、2000年を過ぎてから、もっと言うと、2010年以降ではないでしょうか。
中小企業にとって今の時代は、まずは、「ブランディングというものを正しく理解するところから始める」という段階なのだと思います。

ブランディングとは?

ブランディングという言葉の定義は、おそらく明確には定まってはいません。
語源としては、皆様もご存知の、「ブランド」という言葉です。
ですから、「ブランディング」とは、ものすごく大雑把にいうと、「ブランドを作り、育て、保護する」活動だといえます。


もう少し細かく考えるために、試しに「ブランド」という言葉を辞書で引いてみましょう。
すると、大きく2つの意味があることがわかります。

ブランドとは・・・
(1) 商標(商品名、サービス名、会社名etc.)
(2) 中でも、特に、その品質などが信頼されている商標(商品名、サービス名、会社名etc.)

(1)はかなり狭い意味でのブランドですね。
(2)の方の意味の方が一般的で、いわゆる「ブランド品」とか「高級ブランド」といった使い方は、この意味によるものだと思います。

ここでポイントとなるのあh、「信頼」というキーワードです。信頼が蓄積されていないとブランドとは言えない。
つまり、ブランディングとは、「商標(商品名、サービス名、会社名etc.)に信頼を蓄積していく活動」という言い方をすることができると思います。

ブランディングとマーケティングの関係

「ブランディング」という言葉について考えるとき、難しいのは、「マーケティング」という言葉との関係です。
そもそも、マーケティングという言葉も定義が難しいですが、しかし、少なくとも、ブランディングという言葉よりは、歴史が古く、多くの人に認識されている言葉だと思います。

マーケティングとは、語源は、マーケット(市場)です。ですから、いろいろな説明の仕方があると思いますが、ざっくりというと「自社商品が市場でより売れるように、マーケット市場を調査したり、市場へ働きかける活動」と考えられます。

一方、ブランディングとは、上に説明した通り、「商標(商品名、サービス名、会社名etc.)に信頼を蓄積していく活動」です。
この「信頼を蓄積する活動」の目的を、「市場で商品がたくさん売れるために」と考えるのであれば、ブランディングというのは、マーケティング戦略の一部と考えられるかもしれません。

実際に、一般的には、どちらかというと、ブランディングはマーケティング戦略の一部と考える方が多いと思います。

販売戦略ではなく、資産の形成としてのブランディング

しかし、一方で、ブランディングとは、マーケティングとは全く異なる観点のもの、場合によっては対極にあるものという考え方もあります。
少なくとも、マーケティング用語でいうところの、「マーケットイン」(市場で売れる商品とは何かを考え、作り、販売する手法)は、ブランディングとはかなり異なる概念だと考えられます。

マーケット(市場)とは完全に自分の外側であり、基本的には自分ではコントロールすることはできないものです。
ですから、自分とマーケットを繋ぐための活動として、企業は、常にマーケティングをします。市場は常に動くものですから、マーケティング戦略は、常に変えていかなくてはなりません。

一方、ブランドとは、自分自身への信頼です。
ですから、ブランドを高めるには、市場云々の前に、自分自身を高める必要があります。
もちろん、市場に対して自分自身を正しく伝えていくことも必要となりますが、それ以前に、自分自身で自分のことを知り、見直すことが大前提なのです。
そして、自分自身を高めた結果や、自分自身が得た信頼は、資産として蓄積されていきます。

つまり、ブランド戦略とは資産形成の戦略であり、単なる販売戦略とは大きく異なるものだということです。

あなたがカフェの経営者だったらどんなブランディングをする?

例えば、あなたが、カフェを経営しているとします。

カフェの経営者にとってのブランディングは、自分にとって理想のカフェとはどういうものなのか、それを考えるところから始まります。
ここで考えるのは、あくまでも「自分にとっての理想」であって、市場でうけるカフェではありません。

この「自分にとっての理想」をどれだけ明確に考えられるかが、ものすごく大事です。
それは、一言で言いあらわせるレベルのものではありません。

そして、自分にとって理想のカフェを実現するために、一つ一つ行動していきます。
理想を実現するために最適な店名をつけ、最適な看板を掲げ、最適なホームページを用意します。
最適なコーヒーを用意し、最適な価格を設定します。店内も最適な環境に整えます。
さらに、とても重要なこととして、理想を実現するために最適なスタッフが必要となります。

もちろん、すぐに理想的なカフェが実現するわけではなく、試行錯誤をし、お金をかけ、やがて少しずつ実現されていくことでしょう。

一方で、あなたの「理想カフェ」に共感したお客さんたちは、あなたのカフェに対して信頼を高めていくでしょう。

ここで重要なこととして、やはり、ブランディングというのは、すべて「蓄積」であるということです。
ブランド戦略は、一時的に売り上げを上げることではなく、「資産の形成」なのです。

一番伝えたい「インナーブランディング」という考え方

さて、中小企業がこれからブランディングについて考えていく時に、一番考えて欲しいのは、「インナーブランディング」という概念です。

インナーブランディングの対義語は、アウターブランディングです。自分の理想を外部に向けて伝えるブランディングのことをアウターブランディングと言います。
多くの方が、ブランディングというと、アウターブランディングのことを言うと思います。

それに対してインナーブランディングとは、従業員やスタッフなど、内部人員に向けたブランディングです。
(あるいは、経営者自身も含むかもしれません。)
自社の理想を実現するためには、スタッフにもその理想に共感してもらわなくてはなりません。
そのための活動も、ブランディングなのです。

例えば、スターバックスの一番のファンは、スターバックスのスタッフだと言われています。
ディズニーランドやアップルストアも同じです。

なので、スターバックスでは、お客様以上に、スタッフがプライドを持って働けるカフェを目指しています。
例えば、スターバックスのコーヒーは、1時間ごとに残った分を処分するそうですが、そういったコーヒーの鮮度へのこだわりは、お客様への配慮以上に、スタッフがコーヒー専門店としてプライドを持てるようにすることが目的だそうです。

商標もインナーブランディングの視点で考えてみる

私の専門の商標に関しても、インナーブランディングの視点は非常に重要です。

多くの経営者は、商標について考えるとき、お客様にどのような印象を与えるかを考えます。しかし、それだけでは、十分とは言えません。

商標について考えるときは、次の4種類の登場人物の視点で考えてみましょう。

(1)経営者自身
(2)従業員
(3)エンドユーザー
(4)取引先

(1)(2)がインナーブランディングで、(3)がアウターブランディング、(4)はその中間に位置するものと考えられます。

商品名やロゴマークのデザインを考える時もそうですし、「何を商標登録するか」について考える時も、この4種類の登場人物について考えることがとても重要なこととなります。
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