御社は、銀行をはじめとする金融機関と上手につきあっていますか?

はじめまして、税理士・融資アドバイザーの渡邉と申します。皆さんは、2016年9月に金融庁より「金融仲介機能のベンチマーク」というものが公開され、地域金融機関の融資姿勢が変化しつつあることを知っていますか?これまでの担保や保証に頼っていた融資姿勢から、事業の将来性を評価して融資を行う「事業性評価融資」を積極的に推進していくように変化しつつあります。金融機関が、この事業性評価融資を実行していくために必要なのは、「取引先企業の詳細な情報」です。では、誰にどのような手順で、どのような情報を届ければ融資をしてもらいやすくなるのか。このページで事業性評価をしてもらいやすくなる7つのポイントをお伝えします

①選ぶべき金融機関、仲良くなるべきキーマン

中小企業が融資をスムーズに借りられるようになるためには、自社の身の丈にあった金融機関と付き合うこととその金融機関のキーパーソンとの関係を築くことが重要です。
当事務所にご相談にくる方で、創業間もない事業規模の小さな段階でも都市銀行や大手地方銀行に融資をお願いしようとする方が多数おりますが、これは選択肢として間違っています。中小企業が金融機関に求めるべきものは、「日頃の面倒見がよく、いざというとき、応援してくれること」。そこで、中小企業が選ぶべきは、「地域密着型金融機関」、すなわち、第二地方銀行や信用金庫、信用組合です。

では、付き合うべき金融機関を選択したのち、その金融機関の誰と仲良くなっておくべきなのか。
金融機関の支店で融資に関わっているのは、(金融機関ごとに呼び名は違いますが)一般的に、「担当者」、「渉外担当役席」、「貸付担当役席」、「支店長」の4名です。

● 担当者は、企業を訪問して金融機関の窓口となってくれる人物。融資してもらう時は、この担当者が「稟議書」といわれる申請書類を作成します。

● 渉外担当役席は、担当者の上司です。担当者のフォローを行うのが役割ですが、融資に関してはそう大きな役割を担ってはいません。

● 貸付担当役席は、担当者が作成した稟議書をチェックし、融資の可否を総合的に判断する人物。支店の融資についての責任者です。

● 支店長は、支店の最高責任者として最終決済を行います。

この4名の中でキーマンとなるのは3つめの貸付担当役席です。貸付担当役席と仲良くするためには、何と言っても支店にあいさつにでむくこと。そのためにすべきことは、まずは担当者に対して積極的に「貸付担当役席にごあいさつさせてください」と頼むこと。そこから金融機関との関係づくりがはじままります。そして、貸付担当役席に経営者の顔を覚えてもらい、自社の状況を定期的に報告することで、融資をしてもらいやすい環境が整っていきます。

②銀行員は企業概要のココを見ている

銀行をはじめと金融機関の担当者は、まず融資先企業の実態を把握しようとします。そのために銀行がおさえたいポイントは5つあります。
(1)企業プロフィール (2)業務フロー (3)将来性 (4)財務状況 (5)経営者の資質
これらのポイントについて企業側から金融機関側に情報を提供できれば、「貸してもらいやすい企業」になることができます。

(1)企業概要
「所在地」「代表者名」「創業年」「設立年月日」「事業内容」「主要仕入れ先」「主要販売先」「主要株主」「従業員数」「店舗数」「会社の沿革」などは、金融機関が基本的に知りたいことです、サイトを開設している企業でも、上記のすべての情報が記載されているとは限りません。また、忙しい担当者は、取引先のサイトまで細かくチェックできていません。これらの情報を一覧表にして渡せば、担当者はとても助かります。

(2)業務フロー
業務フローとは、「業務の流れを表したもの」。担当者は意外と、自分の担当先企業の業務について理解していません。業務フローが理解できていないと説得力のある稟議書が書けないのですが、かと言って「御社の業務フローを説明してください」とは担当者もなかなか言い出しにくいのです。そこで、この業務フローについても、図解にして担当者に渡しましょう。御社への理解度は格段に高まります。

(3)将来性
今の金融機関は、「財務内容が担保状況に頼らず、将来性を判断して融資を行う」という融資姿勢に転換している最中です。しかし今までそのような視点で融資をしてこなかった担当者には、御社の将来性がどこにあるのかという、情報収集と分析を行うことがなかなかできません。「内部資源における強みと弱み」「外部環境における機会と脅威」について伝えることで、自社の将来性についての材料を金融機関に渡すことができます。

(4)財務状況
数字について金融機関がチェックする科目は、財務諸表の上から順に、「売上高」「売上原価」「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「当期純利益」。それぞれ、3期分の推移を見ています。
今までなら2期連続赤字や債務超過だと融資してもらえることは少なかったのですが、前項でもお伝えしたように「将来性を評価して融資する」方針に転換しているため、もし財務内容が良くなければ、それ以上に御社の将来性をアピールすることで、融資をしてもらいやすくなります。

(5)経営者の資質
金融機関が融資をする上で最も重要視しているのが、この「経営者の資質」です。中小企業に融資するということは、その経営者に融資するようなものだからです。企業が発展していくのも衰退していくのも、経営者次第。とくに金融機関がチェックしているのは、「経営理念」や「ビジョン」です。
経営理念やビジョンを明確に打ち出すことができている経営者は、軸がしっかりしているため経営がぶれません。その結果、高成長につながっているというケースが多いため、金融機関も取引先企業の経営理念についてかなり注視しています。

これら5つのポイントについての「体系立てた情報」を企業側から積極的に提供することで、金融機関から「ぜひ融資をしたい企業」という評価をしてもらえるようになります。

③銀行員は経営者のココを見ている

金融機関の支店長に「新規融資取引を開始する上で何を最重要視しますか?」と尋ねると、ほぼ全員が「経営者です」と答えます。
それほど経営者とは、金融機関が融資判断をする上でとても重要なポイントとなります。とくに中小企業に対する融資の場合、この傾向は顕著になります。
経営者とは、部下に指示・命令するだけではなく、チームの意識共有や目標達成までの道筋の提示を行い、与えられた任務を遂行するリーダーでもあります。また、結果はもちろんのこと、同時にチーム全員のモチベーション維持や、個々の成長も考えなくてはなりません。そんな、金融機関が経営者に求める資質は以下のとおりです。

(1)経営理念や具体的なビジョンがあるか? (2)社員に対して愛情を持っているか?
(3)成長意欲があるか? (4)目的達成意欲は強いか? (5)数字にこだわっているか?

(1)経営理念や具体的なビジョンがあるか?
経営理念があるのとないのとでは、業績や成長力に大きな違いが出ます。経営理念を明文化しておくことで、経営判断に迷ったとき自分たちが進むべき方向を明確にすることができます。
また、社員に経営理念が浸透していれば、個々の社員が主体的に考え行動するようになるので、一丸となった強い組織を作ることができます。それだけでなく、多くの人間が共感できる経営理念であれば、金融機関や取引先など社外からの信頼を得ることもできます。

(2)社員に対して愛情を持っているか?
会社で一番大事なのは「お金」でもなく「技術やノウハウ」でもなく、「人」。社員を大事にする会社は、働いている社員もその能力を最大限発揮するので、やはり業績が良いものです。「人を育てる上で最も大切なものは『愛情』に尽きる」と、京セラの稲盛和夫氏もおっしゃっています。社員との結びつきが強い社長だからこそ、強い組織を作ることができると金融機関は考えています。

(3)成長意欲があるか?
業績を伸ばしている経営者に共通するのは、「成長意欲が高い」こと。今までと同じことを続けていても業績が伸びないことを、金融機関は知っています。また、自分が成長しようとしない経営者に「成長しろ・挑戦しろ」と言われても、社員はついてきません。自己の成長のために研鑽を怠らないことも優れた経営者の条件であると、金融機関は考えています。

(4)目的達成意欲は強いか?
「なんとなく経営を行っている」社長と、「成果にこだわっている社長」を比べた場合、「成果にこだわっている社長」のほうが頼りになると金融機関は考えています。計画を立て、その計画を達成することにこだわる姿勢を見せるからこそ、金融機関も全力で応援しようという気になります。

(5)数字に強いか?
金融機関の人間が一番嫌がるのは、数字に疎い経営者。売上や利益のことを尋ねても「それは経理に任せているから」と言われると、「誰の会社なのだ」と思ってしまいます。また、数字に疎ければ、どんぶり勘定の経営者と評価されるため、融資についても厳しくなりがちです。
数字が苦手でも、「実績数値」や「目標達成」をメモして常に携帯しておけば、質問されたときに見ながら答えることができます。そんな小さな努力の部分も、金融機関はしっかり見ています。

④銀行員は事業実態のココを見ている

金融機関が融資を行う上において実務上で重要となるのが、企業の実態把握です。取引先の実態を把握するため、「企業概況表」「取引先概況表」「信用調査書」といった名称の「実態把握シート」を作成します。
この「実態把握シート」に加え、「財務分析」や「担保・保証の状況」「他行取引の状況」「取引履歴」等の資料を基にして融資を決定します。
実態把握シートには、以下の項目があります。
(1)事業概要 (2)商流と業務フロー (3)市場・業界の特性と動向

上記の現状を把握した上で、御社と競合との比較を行います。競合に比べて勝っている点が多ければ成長・発展する確率が高いと考えられ、融資はスムーズに行われます。
しかし現在、金融機関において、この実態把握が十分に行われていないケースがよくあります。不十分な情報で融資審査を行えば、その案件に対しての融資判断は厳しいものにならざるを得ません。企業側から積極的に資料を提出し、御社についての正確な実態把握をしてもらいましょう。

(1)事業概要
事業概要を把握してもらうために伝えるべき情報は、以下の8点です。
1.業種 2.取扱商品・サービス内容と売上構成 3.会社所在地・規模・立地状況・所有・稼働状況
4.経営陣の経歴・関係・人物像 5.後継者の有無 6.経営理念・ビジョン・経営方針 
7.株主構成 8.沿革

これらの情報は金融機関も当然把握していますが、たとえばその一部が更新されたとき、新しくなった情報までは共有されないことがほとんどです。定期的に更新情報を「文書」で伝えておきましょう。
事業概要を把握してもらうための資料として、「商業登記簿謄本」「定款」「会社パンフレット」「組織図」「商品カタログ」「WEBサイトのプリントアウト」を提出すれば、御社への理解はより深まります。

(2)商流と業務フロー
商流と業務フローを把握してもらうために、「商品・サービスの内容」「事業の特徴」「仕入先」「販売先」「取引条件」「収益構造(儲けのしくみ)」を伝えましょう。これらを「業務フロー表」という図にして渡すことで、金融機関による実態把握がスムーズにできるようになります。

(3)市場・業界の特性と動向
担保・保証に頼らず、「将来性」を見てもらう「事業性評価融資」を希望するなら、「市場・業界の特性と動向」に基づいた競争力の評価をしてもらう必要があります。そのためには自社の経営分析を行い、その分析結果を提示しましょう。
手法としてよく使われているのは、「SWOT分析」です。「市場や企業を取り巻く環境の変化」「その変化に対する競合先の対応」「競合先の対応が自社に与える影響」を分析し、内部の経営資源分析と併せて「自社の対応方針」を明確にします。

⑤銀行員は社内のココを見ている

さまざまな資料を企業側から金融機関に提出することで融資をしてもらいやすくなるということを、採算お伝えしてきました。しかし情報収集は、資料だけで行うものではありません。
新規の融資取引を行う場合、支店長または渉外担当役席(渉外担当の責任者)は、かならず現場を見に来ます。もらった資料の内容がいくらよくても現場を見ると大違い、ということがよくあるので、金融機関は企業に出向いて提出資料と実態との整合性を確認します。企業側には、現場を見てもらうことで、融資を含めた多彩な提案(⑦参照)を引き出しやすくなるメリットが挙げられます。
金融機関職員は、会社や店舗、工場などを訪問した際、以下のような点を注視しています。

1.オフィス
◎社内は整理整頓されているか ◎業務に関係した賞状やトロフィー(業界での受賞歴など)
◎オフィスに活気はあるか ◎訪問時に従業員はあいさつをするか ◎従業員の服装
◎従業員の構成(年代比、男女比、職種比など) ◎従業員と経営者との風通しは良いか

2.工場
◎立地(そこに工場を構える合理的な理由) ◎生産工程や生産ライン ◎機械の稼働率
◎どれぐらいの人数が働いているか ◎清掃は行き届いているか
◎原料・在庫・完成品の整理整頓はされているか

3.店舗(小売店)
◎立地 ◎周辺の状況人や車の流れ ◎競合店舗 ◎看板等の外観 ◎店舗の広さ
◎陳列されている商品 ◎来店客 ◎店員の人数 ◎接客態度、在庫管理の状況 

4.店舗(飲食店)
◎立地 ◎周辺の状況人や車の流れ ◎競合店舗 ◎内装のイメージ
◎店内レイアウト(席数含む) ◎メニュー ◎顧客の滞在時間 ◎清潔度

5.ホームページ
ホームページは「現場」ではありませんが、新規融資取引の際、担当者はホームページからも多くの情報を手に入れようとします。更新が滞っていると「情報発信」や「販売促進」に対して消極的だと見られますので、可能な限り頻繁に更新することをおすすめします。
◎会社概要 ◎経営理念 ◎製品・サービス・料金 ◎人材募集情報 
◎ブログなどによる近況報告

⑥銀行員からの、よくある質問例

金融機関が事業性評価融資を行う際、一番のポイントとなるのが経営者に対するヒアリングです。事業性評価融資は担保や財務内容に頼らない融資ですから、決算書に書いていない内容が重要になるからです。
事業に関する一定程度の内容については企業側から積極的に公開すべきですが、企業から提供している資料だけではなく、金融機関独自の視点でヒアリングを行うこともよくあります。そのヒアリングにスムーズに答えることで、より効果的に将来性をアピールすることができます。
以下は、金融機関がヒアリングする質問例です。これらの質問に対する回答を、あらかじめ考えておくようにしましょう。

1.企業概要
◎事業を始めたきっかけは何ですか?
◎なぜ、この場所で創業したのですか?
◎これまでに事業の転機などはありましたか?
◎事業を行う中で、もっとも大切にしていることは何ですか?

2.業務フロー
◎○○社さんからは何を仕入れているのですか?
◎○○社さんからの仕入れが多い理由をお聞かせください
◎主要販売先の上位5社はどこですか?
◎今、一番売上が伸びている販売先はどこですか?
◎これから売上の増加が期待できる販売先はどこですか?
◎○○社さんへの販売比率が高い理由をお聞かせください
◎これから取引を考えている仕入れ先(販売先)を教えてください
◎仕入れ・販売ルートは、どのように開拓していますか?

3.将来性
◎御社の商品(サービス)が、お客様に選ばれている理由は何ですか?
◎後継者候補に対して、どのような教育をされていますか?
◎生産設備における御社の強みは何ですか?
◎営業面における御社の強みは何ですか?
◎将来的にはどのような展開を考えていますか?
◎御社の業界内で、どのようなポジションにあると考えていますか?
◎競合他社との違いを教えてください
◎今、一番リスクと感じていることは何ですか?

4.財務状況
◎一番取引量が多い販売先の売掛期間はどれくらいですか?
◎一番取引量が多い販売先の手形サイトはどれくらいですか?
◎一番取引量が多い仕入れ先の買掛期間はどれくらいですか?
◎一番取引量が多い仕入れ先の手形サイトはどれくらいですか?
◎在庫はどれくらいで入れ替わっていますか?
◎前払費用・前受金・仮受金・仮払金の詳細を教えてください

5.経営者の資質
◎御社の経営理念についてお聞かせください。
◎御社の存在理由は何だとお考えですか?
◎今期の目標は何ですか?
◎御社の経営課題はどういうところにあるとお考えですか?
◎中長期的には、会社をどうしたいとお考えですか?
◎どのような社員教育を行っていますか?

これらは融資を行う際だけでなく、担当者が代わるたびに聞かれる内容でもあります。あらかじめ回答を文書化しておけば、新任担当者に御社をより早く理解してもらえるためのツールにもなって便利です。

⑦銀行を、もっと上手に活用しよう

多くの資料を積極的に提出して御社の事業内容を深く理解してもらえれば、事業性融資以外にも、金融機関は御社の状況に沿ったサービスを提供してくれるようになります。
「資金繰りに汲々としている」と言うとなかなか貸してくれませんが、「将来的にこんなことを考えているので、こんなサポートがほしい」と御社の事業戦略・状況を伝えれば、積極的に対応してくれる可能性が高くなります。そんなやりとりを重ねることで金融機関とのパイプはより強固となり、今後の多様な資金ニーズにも応えてくれやすくなります。
とはいえ、担当者レベルからは、思うような提案がもらえないかもしれません。毎月の訪問で仲よくなった渉外担当役席、または支店長に相談することをおすすめします。

事務所紹介

当事務所は、江戸川区平井駅から徒歩5分の会計事務所です。
会計事務所らしくないアットホームな事務所です。

【所長略歴】
 税理士・融資アドバイザー・飲食店アドバイザー
 渡邉 義道
 平成13年 3月 明治大学卒業
 平成13年 4月 都内、会計事務所に入社し、主に中小企業の税務・会計及び相続税対策の仕事に携わる
 平成21年 8月 渡邉税務会計事務所開業
 現在
 TKC東東京会企業防衛制度推進委員会特別委員
 TKC東東京会共済制度推進委員会委員長
 TKC東東京会NM実務セミナー講師
 東京税理士会江戸川北支部租税教育推進部役員
 日本フードカウンティング協会認定フードアドバイザー
 融資コンサルタント協会会員

学生時代、大手居酒屋チェーンにて3年間、飲食店の現場で悪戦苦闘し、店舗マネジメントのノウハウを培う。大学卒業後、都内会計事務所勤務。担当していた飲食店の廃業という悲劇を何度か経験し、単なる記帳代行、税務申告手続きではなく、店舗をトータルにサポートできる身近な経営パートナーとしての会計事務所を作る必要性があると痛感する。
現在、会計税務の枠にとどまらない、融資相談、売上増加支援、リスク対策など、幅広いサービスを提供。 「失敗しない経営」の指導に事務所一丸となって取り組んでいる。
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